2007年9月29日土曜日

フットボールチーム名にみるアメリカの歴史

アメリカンフットボールは日本ではほとんど見る機会がないが、アメリカでは野球を凌ぐ人気プロスポーツだ。各チームが年間16試合しかしないのでチケットはあっという間に売り切れる。シリコンバレー近郊ではサンフランシスコにフォーティーナイナーズ(49ers)というチームがあって、ファンが多い。

49とは1849年のことを意味する。なぜこれをチーム名にしたかというと、1849年はカリフォルニア州の現在の州都、サクラメントの近郊で金鉱が発見された年、つまりゴールドラッシュが始まった年なのだ。これを機会にカリフォルニアの人口は爆発的に増え、急速に発展していった。

その前年、1848年にメキシコ戦争(アメリカとメキシコの戦争)がアメリカの圧勝で終わり、その代償としてメキシコはカリフォルニア、テキサス、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、ワイオミング、コロラド、当時のメキシコ領の実に3分の1という広大な土地、を割譲した。その次の年に巨大な金鉱が発見されたのだからメキシコはさぞや悔しかっただろう。ついでに言うならば、さらにその後、テキサスでは無尽蔵の油田が発見されている。超大国への発展の原動力となったカリフォルニアの金とテキサスの石油をこの年にアメリカは手に入れたのだ。

メキシコ戦争は現在の感覚ではどう考えても侵略戦争で、実際メキシコでは「アメリカのメキシコ侵略」と呼んでいる。もちろんアメリカの言い分は違う。カリフォルニアの中学生用の歴史教科書には「メキシコの所有は名目的なもので、何もない荒地を開拓してヨーロッパ文明とキリスト教を持ち込み、発展させたアメリカこそ正当な所有者」と書いてある。

メキシコがこの歴史教科書に文句を言ったという話はないし、言ったとしてもアメリカは相手にしないだろう。



当時メキシコから独立していたテキサス共和国。メキシコは独立を認めておらず、アメリカへの編入がメキシコ戦争の直接の原因になった。

Wpdms republic of texas

2007年9月26日水曜日

携帯電話とBluetoothヘッドセット

先日ニューヨークへ行ったとき、マンハッタンあたりで通勤しているビジネスマンが耳のところに変なものを付けてボゾボソ独り言を言っている。そういえばアリゾナやサンディエゴでITカンファレンスに参加してた時も時々見かけた。何だろうと思っていると、どうやらBluetooth対応のヘッドセットでワイヤレス接続した携帯電話で通話しているらしい。

日本ではBluetooth対応の携帯電話は少ないが、スマートフォンの普及しているアメリカやヨーロッパでは多くの機種が対応している。それに超小型のヘッドセットを接続して車の運転時や歩いているときに携帯電話を使っているのだ。ヘッドセットは軽いものだと15g〜20gで長時間耳に掛けてもまったく苦にならない。かかってきた電話に出るのも携帯電話を操作する必要なない。ヘッドセットの小さなボタンを押すだけで応答したり切ったりできる。電話をかけるのもリダイヤルなら同じくヘッドセットのボタンを押すだけだ。しかし、いくら便利で小さくても、運転中はともかく歩いているときや電車の中でまでヘッドセットを常時つけるのは勇気が入りそうな気もするが、実用主義者の多いアメリカでは気にしない人は気にしないのだろう。

Bluetoothのヘッドセット自体はわりと高価でアメリカでも40ドルから200ドルくらい。日本だと最低でも6000円くらいするようだ。もっとも携帯電話専用ということではなく、パソコンでのチャットやスカイプでも使えるので一つあれば重宝するかもしれない。ちなみに僕の携帯電話はBluetooth対応だ。今度アメリカへ行ったとき気が向いたら買うかも・・・。

2007年9月17日月曜日

IMでの決まり文句とアメリカでの思い出

IMでメッセージを送る時、決まり文句というものがある。よくコンタクトを取る人なら「お疲れ様です」、そうでもない人なら「お世話になります」といった言葉から始まる。これは会社にもよるだろうし、もちろん人にもよる。僕の場合、ある程度意識してカジュアルになるようにしている。例えば相手が若い人で金曜日なら「T.G.I.F.」だ。これは「Thank God It's Friday」の略で「神様、金曜日をありがとう」つまり「明日は休みだ、うれしいな」といった意味になる。アメリカでは結構ポピュラーな挨拶だ。これに対し「Oh, Yah」などと返してくれば「おっ、わかってるじゃん」という事になるが、たいていは「なんですかそれ?」と質問される。外資系なのでいいが、普通の会社ならキザと思われるかもしれない。

何か依頼されたり質問されて、相手に「ありがとうございました」と感謝されたときは、「anytime!」で締めくくる。この意味がわからない人はいないだろうが、実はこの言葉には思い出がある。

それは在米中、感謝祭(Thanks Giving Day、11月の第4木曜日)の日だった。感謝祭はその年の収穫を神に感謝する日で、アメリカでは非常に重要な祝日だ。この日は近くに住む家族や親戚、親しい友人などが集まって七面鳥やパンプキンパイなど開拓時代からの伝統的なご馳走を食べる。僕の家族も毎年招待されたが、女達は朝早くから料理を作り(七面鳥のローストは5時間くらいかかる)、男どもは朝っぱらからワインやビールを飲んだりする。日本の盆と正月が一緒になったような日だが、日本と違うのは日頃は24時間営業のスーパーやマクドナルドまで休業してしまうことだ。つまりそれくらい大切な日なのだ。

その感謝祭の朝、ポケベルが鳴ったので見るとサーバーの名前とエラーコードが表示されていた。サーバーに異常があると自動的にシステム管理責任者のポケベルに通知してくるのだ。あいにくFreeBSDのサーバーで復旧方法がよくわからない。担当の技術者に連絡しようとしたが、何しろ感謝祭で誰とも連絡が取れない。困り果てていると、近くにある空軍基地のコンピュータ担当の技術兵で、時々手伝ってもらっている友人を思い出した。彼なら詳しいはずだ。電話をすると幸いにも彼が出てすぐ来てくれると言う。無事復旧して「助かったよ、感謝祭なのに来てくれてありがとう。」とお礼を言うと、帰ってきた言葉が「anytime!」だった。

彼とは帰国後連絡を取っていないが、噂ではイラク戦争への派遣命令を拒否したため二階級降格の上、不名誉除隊になったという。不名誉除隊とは懲戒免職のことで、アメリカでは国家に対する裏切り者扱いされ、まさしく一生不名誉を背負うことになる。さらに軍命を拒否したとなれば懲役刑も科されているはずだ。彼なりの考えがあったのだろうが、イラク戦争のニュースを聞くと時々あのときの彼の笑顔が思い出されるのだ。