2008年6月23日月曜日

あるアメリカ人IT技術者とオフショア・アウトソーシング

友人にシリコンバレー在住のIT技術者(アメリカ人)がいる。年に数回程度メールのやり取りをしていたのだが、先日久しぶりに電話(Skype)で話をした。

彼は元空軍のコンピュータシステム担当の軍曹で、10年ほど前、38歳の時に退職した。アメリカ軍は給料は安いし、戦争があれば文字通り命がけで働く必要がある。しかし、無料でいろいろな教育を受けられる。20年間勤続すると恩給がもらえるし、退職後も医療費もほとんど無料、住宅ローンも格安で借りられる。だから裕福でない家庭に生まれると高卒後にすぐに軍に志願し、20年後、つまり38歳で除隊して第2に人生を始める人が少なくない。彼もその一人だ。

彼は幸運にも軍でコンピュータの教育を受け、技術と経験を持っていた。さらには最後の勤務地がシリコンバレーの近くの基地だったので再就職先を見つけるのも苦労はなかった。中古だが郊外に家も買った。

しかし、その生活が大きく変わった。ある日マネージャに呼ばれて「君の仕事はインドの会社に任せることになった。今月一杯で解雇する」と言われた。「インドにアウトソースすれば君の給料の半分で済む。なぜ君を雇い続ける必要があるんだね」との言葉に声もでなかったそうだ。

アメリカではインドへのオフショア・アウトソースは想像以上のペースで増加している。彼と同じ理由で仕事を失った中堅クラスの技術者はかなりの数になる。彼は経験豊富な技術者だが、特別に高度な技術や特殊な専門分野を持っているわけではない。学歴も高卒だ。もっともアウトソースされやすいクラスなのだ。

「経験豊富なんだから、きっといい仕事が見つかるよ」としか彼にかける言葉は思いつかなかった。しかし、実際は難しいだろう。

日本でも周りを見渡せば驚くほど仕事が中国にシフトしている。僕の職場でもプロジェクトメンバーの約10%は中国人だ。ミーティングは電話やウェブなどを使ったコラボレーションツールで中国から参加している。

身を守る方法はたった一つしかない。自分の知識や技術を高める努力を惜しまず、常に自己投資することだ。「IS YOUR JOB NEXT?」はアメリカに限ったことではない。

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