2008年12月4日木曜日

IT技術の空洞化-ディザスタリカバリの観点から-

都内のある大手のIT関連企業がディザスタリカバリプランを策定した。大規模災害が発生したこと事を仮定して、コンピュータシステムの中から事業の継続に必須のシステムを選び出し、継続稼動に必要な予備機材や人員を見積もった。そして運用に必要な人員の名簿を作ったのだが、それにはその会社の社員がほとんど含まれていなかった。ほぼ全員が派遣や請負企業の社員だったのだ。正社員であっても災害時にデータセンターに技術者を集めることは難しい。交通の問題もあるが、そもそも家族を残して出勤しろといっても無理な話だ。ましてや派遣や請負先社員にそんなことを言っても100%不可能だろう。一週間分の食料備蓄まで検討したその計画は頓挫した。なぜこんなことになったのだろうか。

現在の日本の大企業で自社でITシステムを運用している会社は多くない。IT部門は企画ばかりしていて、ほとんどITベンダー任せだ。そして、そのITベンダーも設計やらコンサルティングばかりやっていて、具体的に手を動かしてシステムの構築や運用をしているの下請けの技術者だ。ITベンダーの社員は一通りの教育を受けた後、2-3年もすれば下請けに指示ばかりして自分で手を動かすことはしなくなる。身につくのはシステム構築の技術ではなく、パワーポイントやエクセルの使い方ばかりだ。IT関連の企業でさえ、IT技術が空洞化しているのだ。

欧米でもIT部門の運用はITベンダーの利用が欠かせない。しかし、システムの基幹部分は内製している会社は少なくない。一つは人材が流動化しているため、優秀なIT技術者を社員として採用しやすいことがある。しかし、根本的な理由はやはりリスク管理の考え方にあるのではないか。

アメリカの同時多発テロの時、マンハッタンにある多くの企業ではコンピュータシステムが稼動不能になり復旧に多大な時間がかかった。しかし、システムを内製し、自前の技術者を抱える企業は迅速に復旧させることができたと言う。結果損害を最小限に抑えることができたことは言うまでもない。

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